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sunny bitters (サニービターズ)

神奈川県の葉山町。今回は海と山が近い穏やかな環境に建つ住まいをご紹介します。
そこは、プラスマイズミアーキテクトで代表を務める真泉 (マイズミ) 氏の自邸。
2LDKですが、仕切らずにつなぐ“ワンルーム”のような構成と、高さ20cm〜25cmのレベル差で居場所を繊細に切り替える設計が、日常の動作にぴたりと寄り添います。
ガラス面を大きく取り、外の光と風、景色を暮らしの芯へ。葉山の湿潤な気候に呼応し、空気が家中を回る間取りが特徴です。

真泉氏が貫くのは、家具のレイアウトとレベル差で領域を編む考え方。
住まいを大きな箱と捉え、その内部に机やベンチなどの“家具的な建築”を積層していきます。
視線は抜け、気配はつながる、けれど、身を寄せたい時にはそっと隠れられる。
その中庸 (ちゅうよう) を、色の切り替えや段差で丁寧にチューニングしています。
エクステリア:約45坪 (敷地面積)

外観は床が張り出し、ふわりと浮く印象。
敷地境界の高低差を読み、必要以上に基礎へ負荷をかけない納まりとしています。
葉山に多い緩勾配屋根と風景の呼応も意識し、地形との親和を図ったデザインです。
細いアプローチと高低差のある外部の階段は、緑へ視界が抜けるプロローグ。
玄関に至る直前、ガラス越しに室内の暮らしを感じ、“迎え入れられる”という体験を生みます。
玄関土間:約5帖 & 居間1 / 居間2 (リビング):約13帖

玄関土間には座れるテーブルを設け、外と中の境を行き来するたまり場として機能。
来客時の待合や子どもの支度など、生活に小さな余白が生まれます。
1階はフラットではなく、3つのレベルがゆるやかに連なる構成です。
最も低いレベルが玄関土間、ひとつ上がってソファのある居間1、さらに窓辺の居間2は一段上がるという“高さのグラデーション”で、動と静が自然に切り替わります。


また、居間1には門型フレームを設け、“見せない袖壁”のように領域感だけをそっと付与。
居間2は、3方向のガラスが朝の光と夕景の陰影を引き込み、太陽のリズムに沿った暮らしへ導きます。
視線は通しながら心理的な仕切りをつくり、落ち着きと開放感の同居を実現。
この“視線と高さの調停”は、様々な高さの“座れる居場所”が連続し、それぞれから抜けのよい景色を得られる構成です。
居間3:約4帖 & バスルーム

2階へ上がると、テーブルと椅子が3脚〜4脚ぐらい置ける約4帖の居間が現れます。
ここは在宅ワークの作業場、子どものスタディ、軽食の場など多目的に使える“第二のリビング”です。
テーブルのくぼんだところに座ることで生まれる安心感や、曲線要素によるやわらぎで、長居したくなる落ち着きを演出。
1階の大きな居間に対して、静かに集中したい時の避難場所にもなります。
季節や時間帯で気持ちよい場所が変わる現実に合わせ、家族が最適な居場所へ移動できる仕立てです。

浴室は壁も床も濃い緑で一体を塗装。
狭くなりがちな水回りほど思い切った色でキャラクターを与える発想で、コンパクトでも“気持ちが切り替わる”体験をつくっています。
扉を開けるとすぐに浴槽があり、まるで“部屋の真ん中に浴槽がある”ような開放感。
脱衣所を挟まず、室内からダイレクトに浴室へ入る珍しい間取りです。
中間領域を省くことで気配と温熱が連続し、入浴が暮らしの中心のアクティビティとして立ち上がります。

寝室1:約4帖 & 寝室2:約3帖

この住まいは2方向の階段が上下をつなぎ、家全体にぐるりと回遊性を生みます。
奥の階段の途中には約4帖の寝室1があり、少し登った先に約3帖の寝室2がお出迎え。
それぞれ約80cm程度のレベル差を設けて、“おこもり部屋”を強調。
2室のあいだには完全な壁ではない「目隠し壁」を立て、レベル差と組み合わせて視線は交わらず、空気は緩やかにつながる関係に。
これにより、家族の気配を感じながらも睡眠の質を落とさない“守られ感”が生まれます。

キッチン:約3帖

この家のキッチンは寝室1と高さの関係を“連結”。
寝室の床面=配膳カウンターとして機能し、布団を畳むと床のレベルがシンクの天板とほぼ同高に。
これによりキッチンの裏側に作業スペースが作られるので、お皿を並べたりご飯をよそったりできます。
多様な“向き合い方”を許容する寸法思想です。
加えて葉山の湿気環境を踏まえ、扉で閉じないオープン収納で空気を回す設計。
道具の出し入れもしやすく、お片付けがスムーズなのも見逃せないポイントではないでしょうか。

正面はリビング側 (居間1) からもレベルが下がることで、家事をしていると空へ視界が抜け、明るさと開放感を確保。
この“設計された連携”が、面積以上の広がりと、日々の作法の美しさを引き出します。
壁を増やさず、家具と高さで居場所をつくる。
プラスマイズミアーキテクトの設計思想が、暮らしの芯を的確に支えます。

これから家づくりを考える方へのメッセージ

最後に真泉氏はこう語ります。
いまの家は、断熱や気密といった建物性能が飛躍的に向上し、冬はあたたかく、夏はすずしい。
一方で、性能を優先するあまり窓が小さくなりがちなのも事実。
けれど、私たちの暮らしをゆるやかに整えてくれるのは、太陽のリズムや風の通り、外の気配といった、数値では測りにくい心地よさです。
大切なのは、性能 × 開口計画 (採光や眺望) × 通風 × 外との関係を一体でデザインすること。
窓は熱を出入りさせる“弱点”ではなく、光や風および景色を招き入れる最強の味方にもなります。
プラスマイズミアーキテクトがこの家にかけた想い
それは、建築的に壁をつくらずに区切られた住まいです。
家具や段差を用いて設計された立体的な空間が、人と人との距離を緩やかつなげ、家族にとって居心地のよい暮らしを実現します。
■住まいの詳細情報
・建物 sunny bitters
・場所 神奈川県
・敷地面積 154.66㎡ (46.78坪)
・延床面積 77.31㎡ (23.38坪)
・床面積 1F /51.44㎡ 2F / 25.87㎡
・間取り 2LDK
・家族想定 3人家族
・会社 株式会社プラスマイズミアーキテクト
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今回は、株式会社プラスマイズミアーキテクトが手がける、建築家の自邸をご紹介します。
海や山が近くて木々に囲まれている、伸びやかな暮らしが送れる神奈川県の葉山。
開放的な窓からは、雄大な景色や差し込む光など、自然を享受できる住まいです。
掲載企業・ブランド紹介
プラスマイズミアーキテクト
公式HPはこちら
https://maizumi.net/