住まいに色を取り入れる時の考え方

Contents

家の中の「色」のこと

家の中の「色」のこと

住まいに求める価値観が多様化する中で、まだ住宅のつくり手があまり凝った提案が出来ていない分野がある。それは「色」だ。

ちょっと考えてみれば、天井や壁が住まいの中で目にする最も大きな面積を占めていることに気付く。リビングやダイニングの壁、寝室の壁、洗面所、廊下など、目にする総量としては最も大きい。

だからもしその色が変われば、住まいの印象はまったく別の物になることは想像に難くない。 (もちろん色どころか素材まで変わるとしたらもっとそうだ)

だけどここで問題が出てくる。色って実は難しい。

壁や床の色を変えるとガラリと印象が変わる、良くも悪くも大きく変わってしまうだけに「印象で選んだけど、住んでいるうちに変な色だと気が付いたらどうしよう」とか、「個人的な趣味に走り過ぎてないだろうか」、「子どもっぽいと思われたらいやだ」、「友達にオシャレに思われなかったら悲しい」・・・などなど。

色について悩みだすと、悩みがものすごく深くなってしまう。

そんな不安があると、壁はやっぱり無難な白にしておこう。何ならインテリアにも合わせやすいしと、そんな理由を付けて住まいの中の「色」に自分らしさを反映できなくなってしまう。それは悲しい。

だからこそ、もし色に対する悩みを相談できる専門の場所があったらどうだろう?

カラーワークスは、世界的に品質の高さで知られる Farrow&Ball (ファロー&ボール) の塗料や壁紙といった材料の販売から施工まで手掛ける。そんな同社が目指しているのは、誰もが家の中で色をもっと楽しめるようになることだ。同社では販売する塗料を活用したカラフルな住まいの事例を紹介するだけでなく、カラースタイリストという資格を持つ色づかいの専門家に、ユーザーがオフラインまたはオンラインで相談できる場所をつくっている。

「もっと私たちは住まいの中で色を表現していいんです。ちょっとした知識があれば余計な不安がなく色を楽しむことが出来るんです」。カラーワークスのFarrow&Ballのカラースタイリストを務めている川上あすか (カワカミ アスカ) 氏に色彩に対する想いを聞いた。

色の悩みは当事者にしか分からない

色の悩みは当事者にしか分からない

■最初に、この銀座サロンはどういう場所なんでしょうか?

ひとことで言うとインテリアの色の相談ができる場所です。

リビングの色を変えてもっと自分たちらしい家にしたい、暮らしを楽しくしたい、それに合わせてほかの部屋の色を変えるにはどんな色がいいか、そんな住まいの色に関するご相談をお受けしています。

色の相談ができるカラーワークスの「銀座サロン」
色の相談ができるカラーワークスの「Farrow&Ball (ファロー&ボール) 銀座サロン」

■どんな人が対象になるのでしょうか?

インテリアの色のことで悩んでいるすべての人が対象だと考えています。

ちょっと想像してみてほしいのですが、ある日、家のリフォーム・リノベーションをすることが突然決まって、色をすべて決めなくちゃいけなくなったとします。これを自分だけで考えるのはとても大変なことです。

リビング・ダイニング、廊下、水回り、寝室、トイレなど、ほぼすべての場所で色を決定しないといけません。自分の好きな色を選んでいけばいい、なんて安易な発想ができないのが住まいの難しさで、ある程度の期間はその場所に住み続けるはずだし、家族や友人の反応も気になりますよね。自分だけ満足していればいいわけではないし、自分だって嫌になってしまうかもしれない。それに各部屋だけでなく、全体の統一感も気にしないとカッコ悪くなってしまう。

あの色にしようか、派手すぎるかな、この色もいいなって、色には分かりやすい正解というものがないので悩みますよね。悩みすぎて深刻な表情でいらっしゃる方を何人も見てきました。

でも自分たちらしさを色でも表現できれば、より快適に暮らせるはずなのは皆さん分かっています。だから諦めてほしくない。無難な選択をしてしまう前に相談に来てほしいんです。

■色っていう感性の部分だからこそ、悩み続けてしまうのは想像できます。

判断の基準が一概に言えず難しいですからね。とあるお客様は、家をリフォームするときに「好きな黄色を取り入れたい」という想いがあったそうなんです。

でも素直に取り入れていいのか分からなかったそうです。なぜかというと、好きな色だけど、暮らしている中で悪目立ちしないのか、黄色の中でもどういう黄色なら自分の家のリビングに馴染むのか、家族に反対されないかと、ものすごく悩んでしまったそうなんです。

さらにリビングは黄色系統にしたいけど、その場合リビングのドアの色は何色がオシャレに見えるか、そうするとその先の廊下の色は何色にすればマッチするのか、と悩みが尽きなかったと。壁の色を変えるのは周りのたくさんのヒト・モノに影響を与えるので、簡単に見えて実はすごく悩ましいんです。

■床の色と合うのか、この色にしちゃってほんとに大丈夫なんだろうかとか?

色ってすごく繊細なので、皆さんに不安があるのはとても当たり前のことです。家というなかなか失敗できない部分でひとつひとつ、一人の人間が決めていくのってものすごく大きなストレスになってしまいます。

結果的に色選びに失敗したという印象を持ってしまえば、ずっと後悔してしまいます。住まいに愛着が持てないなんて状況になってほしくないんです。

Farrow&Ball 銀座サロンのカラースタイリスト・川上あすか (カワカミ アスカ) 氏

■それを解決するためにこの場所をスタートしたんですね

そうですね。色についてのお悩みって、お話ししたように思ったよりも大変なのに相談できる場所がほとんどない。それにご夫婦の間でも悩みが共有できないこともよくあるんです。例えば色についてはパートナー任せで、奥様は真剣に選んでいるのにご主人様は軽く考えているから相談できないとか。

■ちょっと結婚式のトラブルと似ています

そうですね。でも、実はそれよりもっと身近なお悩みのはずなんです。誰もが毎日必ず目にするのが住まいの色なんですから。

だからこそ、安心して本当に居心地のいい色を取り入れられるように、お客様が気軽に色の相談ができる場所をつくりたかったんです。

自分だけのカラーパレットをつくる

自分だけのカラーパレットをつくる

■どのような相談があるのでしょうか?

前提としてここは東京の銀座なので、マンションやオフィスのリノベーションの相談が多いです。もちろん新築や戸建てのリノベーションの方も多くいらっしゃいますし、オンラインでもご相談を受け付けているので、日本全国のお客様にもご対応が出来ます。

相談として多いのは、リノベーションをきっかけに「色」を自分たち好みにしたいということです。まずは理想の暮らしづくりのために、ライフスタイルや趣味、家族構成、ご家族が大切にしていることなどをヒアリングさせていただきます。

その後、好きな色をお聞きして、メインの色系統を決めたら、そこからほかの部屋やアクセントになる部分の色についても、バランスが崩れないような配色を提案していきます。

ただ、カラーパレットを見ながらお客様と話していると、「この色もいいね。取り入れられませんか?」って要望が次々に出てきて、今度はその系統色の中からメインの色と相性のいい色をお選びして、というやり取りを何度か繰り返すことがよくあります。それはすごく楽しい作業で、そうやってお客様ひとつだけのカラーパレットをつくっていきます。

まずはメインの系統色を相談しながら決める
まずはメインの系統色を相談しながら決める
コンセプトやキーワードを軸に世界でひとつだけのカラーパレットをつくっていく
コンセプトやキーワードを軸に世界でひとつだけのカラーパレットをつくっていく

■メインの系統色に対して、別の系統色の中にバランスが崩れない組み合わせがあるんですね?

例えば、青といっても青だけで何十色もあります。白が入っているもの、グレーが入っているもの、黄色が入っているものなど、見えている色を構成する要素があって、そのつながりを理論として意識することで、調和のとれた色づかいができます。

なにより、背景として理論があることを分かっていれば、安心して色を選択することが出来ますよね。きっと後悔がなく、ストレスがないんじゃないかと思います。

メインの色に対してバランスを崩さない配色を探すことができる (Farrow&Ballのカラーチャート)
メインの色に対してバランスを崩さない配色を探すことができる (Farrow&Ballのカラーチャート)

■安心して自分の好きな色が選べるようになるわけですね

もちろん「リビングに合わせるその一色が分からない」というお悩みでもいいんです。「分からないけど、この色はなんか気分が乗らない」そんなご相談も時々あります。その場合、床の色、お気に入りの家具や家自体のスタイルといったものから由来する、最もマッチする色を選べるようになります。

きちんと理論さえわかってしまえば、間違いがない色を選んだという安心感も生まれます。

安心して色が選べれば自分らしいユニークな色づかいができる
安心して色が選べれば自分らしいユニークな色づかいができる

■床材の色をひとつ基準にすると、スタートしやすいかもしれないですね

床材の色を基準にするのも導きやすいですね。たとえばグレーの人気が続いていますが、無彩色 (ブラックやホワイトのような色味のない色) のためインテリアにも合わせやすいこともあって、お客様からの要望が多いんです。

そうすると、実はグレーの中にも何色もあって、床材の色と合わせることを考えると理論的な選び方が必要になるんです。チークやチェリー系の床材の色だと、すこし赤が入った方がぴったり合うとか、アッシュ系の床材の色だと青が入ったグレーの方がしっくりくるとか、見比べてみるとよく分かるので、実際に見比べてもらいながら説明していきます。

トレンドのグレーの中にも何色もあり合わせやすい色が異なる
トレンドのグレーの中にも何色もあり合わせやすい色が異なる
床材の色と合わせながら選んでいくことも
床材の色と合わせながら選んでいくことも

■そうやってプロの方に理由を説明してもらえるとより納得できます

やっぱり、それが私たちカラースタイリストやこのサロンの目的ですね。理由が分かると安心できるじゃないですか。「Aという色とBという色が調和するのは、こういう理由があるからなんだ。だからこの色にしたんだよ」って、友達や家族にも説明がしやすいですし。

しかも、家にはたくさん部屋があって、機能や役割によって分けたいという要望もありますよね。その一つ一つをまったくつながりのない配色にしてしまうと、全体の印象がチグハグしてオシャレじゃなくなってしまいます。床材の色から始まるとしたら、リビングの壁の色、廊下の色、その先の部屋それぞれの色は個性や機能を反映しているんだけど、実はつながっている。そういう色の使い方、選び方ができるのが私たちの強みです。

リビングと廊下の色が別系統の配色でも違和感なくつながっている
リビングと廊下の色が別系統の配色でも違和感なくつながっている
廊下に大胆な色だって安心して楽しめる
廊下に大胆な色だって安心して楽しめる

■ほかに今要望の多い人気の色はありますか?

ピンク系が人気がありますね。でも、ピンクはピンクでもお客様の思い描くピンクはそれぞれ違います。多いのは、ピンクにしたいんだけど、派手なピンクにはしたくないと。そこで私たちがその相性の良い色をお選びします。実はこんな色とも合わせられて全体のトーンがコントロールできる、というのが分かると、自分の理想であるピンクをより上手に引き立たせることもできます。

ピンクがメインでありながら落ち着いたトーンの色づかいになっている
ピンクがメインでありながら落ち着いたトーンの色づかいになっている

あとは「サーフィンが好きだからそんなイメージで」とか、「海外の何々を意識して」とか、「メインのソファを中心にしつつ無難にならないように」とか、まだイメージの固まっていないご相談も多くあります。そこからはある程度ヒアリングが必要になります。でも理想の住まいを実現していただく作業なので、すごく楽しいですよ。

これから進めること

これから進めること

■ユーザーが愛着ある家をつくれるとてもいい取り組みだと感じました。色についてはまだまだ知らないことばかりです

弊社が取り扱っている塗料のFarrow&Ball (ファロー&ボール) はイギリスでつくられているもので、質感にもこだわりがあるんです。顔料が通常の塗料の30%以上豊富に含まれているため発色が良く、光の当たり方によって繊細に色が変化します。

たとえば朝の明るい光、日中の少しオレンジがかった光、夕方の光、それぞれの光によって壁の色が繊細に変化するのがFarrow&Ballの魅力なんです。

■リノベで塗装をご検討される場合まずどうしたら良いですか?

まずは、リノベーションをご検討されているリノベ会社さんに「塗装仕上げをしたい」とお伝え下さい。

そして、そのリノベ会社さんのご担当者様と一緒にFarrow&Ball 銀座サロンへお越しいただいて色をご検討されるのが一番早いと思います。

もちろん、色を決める際は、おひとりで銀座サロンにお越しいただいても大丈夫です。大掛かりなリノベーションをご検討されておらず、今住んでいるご自宅の壁を塗装仕上げに変えたい、という方も是非ご相談ください。1室からでも、壁の塗装を承ることは可能です。

遠方の方でしたら、最初は是非Farrow&Ball オフィシャルサイトから色選びのためのカラーチャートをご依頼ください。カラーチャートは無料でお取り寄せいただくことが可能ですので、ご自宅で色選びをお楽しみいただくことが出来ます。

英国の老舗塗料メーカー「Farrow&Ball」は顔料が多いため色に深みがある

■カラーワークスでは職人さんの研修も行っているんですよね

カラーワークスでは施工も行っているので、施工する職人の方々を対象にした独自のスクールも定期的に開催しているんです。

その理由は色に対する理解を深めてもらいながら、材料ごとの正しい施工の仕方を学んでもらうことでクオリティを担保するためです。

さらに施工の技術によって鉄 (アイアン) やサビを表現することが出来たりとか、実は壁材による表現ってすごく奥が深いことを知ってほしいからなんです。

カラーワークスでは職人の指導も行っている
カラーワークスでは職人の指導も行っている

■色だけでなくその先の施工技術にも絡んでいるんですね

実際に高い技術を持っている職人さんに、スクールの生徒さんたちを指導していただいているので、技術や考え方がほかの職人の方にも広がっていっています。

将来的には、住まいの色をもっと楽しめるように働きかけていくことと同時に、そんな職人さんたちの技のことも、もっと多くの人に紹介して拡げていきたいですね。

インタビューにお答えいただき、ありがとうございました

■インタビューにお答えいただき、ありがとうございました

好きな色でお気に入りのリビングをつくろう

好きな色でお気に入りのリビングをつくろう

たくさんのリノベーションや新築の物件写真をみせてもらった。

正直、こんなに多くの色使いは普通のつくり手から見せてもらうことはなかなかないと思う。輸入ペンキがメイン商材なので、まさに海外のそれくらい大胆な色の使い方をしている。壁にオレンジや紫を取り入れるのは、やりたいと思っていても実際に実行するのはなかなか勇気がいることだろう。

だからこそカラーワークスは変えていきたいのだ。

その理由は写真を見ればよく分かる。ひとつひとつの色を見ればちょっと大胆な色に見えるかもしれないが、部屋全体の仕上げとしてどれも品があるというか、まとまっている。そういうことがきちんと色の理論があればできるのだ。

こんな部屋に住んだら楽しそうだなとか、毎日刺激を受けそうだなとか、色々思いを巡らせてしまう。無機質なただの白いビニールクロスの壁には何も刺激を受けないのとは対照的だ。

もっとも「白」は光を100%反射してしまうため、実は緊張感をもたらす色だそう。薄いグレーやベージュなど、少し色を入れるだけで、その空間での居心地の良さは断然に変わるという。

自分らしい色で家の中が整って心地よく、なんだか楽しいと感じられる暮らしは最高だし、それに色を変えるだけで理想に近づけるならコスパもめっちゃいい。

実は私はノートパソコンに、「将来こんな家に住みたい」という画像のメモフォルダをつくっている。パッとみて素晴らしいアイデアがあったり、全体の雰囲気がよかったりする家の事例写真を保存している。

それを見返してみても、色でこの写真を保存したんだなーと思い返せるものはなかった。ほんとに情けない話だ。目線の大部分を「色」が占めているのに。

そこに気付けば、お気に入りの家やリビングに出会うために、お気に入りの色づかいを必ず見つけた方がいいことが理解できる。それを何色も見つけても「この色とこの色は合わないかも」と心配する必要がないことも今は知っている。自分たちでどうにもできなくなったら、相談しに行けばよいのだ。

住まいの色。こんなに大きな要素を見落としていたのはすごくもったいなかった。

カラーワークスの住まいをYouTubeで紹介しています
掲載企業・ブランド紹介

カラーワークス

DIY、新築やリノベーションを考えている方へ、多彩なカラーのペイントや壁紙などを使って色で生活を豊かにすることを提案。東京ショールーム (銀座サロンとは別) ではHowtoを学べるペイントレッスンや、インテリアカラーをコーディネートするカラーコンサルタンシーサービス、ペイントインストラクターの派遣をするダイバースなど、さまざまなサービスを展開。2022年には英国の最高品質老舗ブランドであるFarrow&Ball (ファロー&ボール) の銀座サロンをアジアで初めてオープンさせた。銀座サロンではFarrow&Ballの厳選された132色の奥行き深い色と上質な質感を使ってインテリアの色をコントロールし、お客さまのリノベーションをサポートしている。

公式ホームページはこちら 
https://www.colorworks.co.jp