あふれるアイデアをオシャレにまとめた家

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八神工務の家づくり

八神工務の家づくり

八神工務は愛知県清須市を拠点に家づくりを行っている工務店だ。その八神工務の取締役である八神直嗣 (ヤガミナオツグ) 氏に、ちょうど自宅を建てたタイミングで話を聞くことができた。

工務店取締役という家づくりの専門家がつくる自邸だからこそ、家づくりへの想いがダイレクトに表現されているはず。どんな想いが反映されてどんな空間になっているのか、大いに気になるところ。

実際に取材させていただいて、私たちの想像以上にたくさんの工夫が凝らされた家になっていることが分かってきた。そして随所にポイントがありながらも、住まい手であり家を設計した本人でもある八神氏の家づくりの想いは、一つに絞られていることも判明した。

八神氏が何より大切にしているのは、自身よりも「奥さんや子どもたちの暮らしを良くしたい」こと、そして家族との距離感である。たくさんのアイデアがありながらも、視点は常にそこを向いているのだ。しかもそれがごちゃごちゃとしているわけではなく、全体ではオシャレにまとまっている。さすがはプロのつくり手だ。

そして、この自宅は八神工務の家づくりそのものであって、一般的な価格で建てられる住まいでもある。どんな想いを込めて自宅をつくったのか。八神氏に想いを聞いた。

自邸兼モデルハウスに込めた想い

自邸兼モデルハウスに込めた想い

■自邸がモデルハウスになっているんですね

− 八神氏コメント:うちは60年の歴史がある工務店なんですが、1年前に私が家づくりの方針を完全に任されることになったので、八神工務のこれからの家づくりをよりリアルな形でお伝えできる機会がないかなと考えていました。

それで、子どもたちが大きくなってきて、自宅を建てるタイミングだったので、それならここをモデルハウスとしてもお客様に見てもらえる場所にしよう、それなら誰も住んでいないモデルハウスと違って、もっと暮らしのリアルをお客様に伝えられる場所にできる。そんな風に思い立ったのがきっかけです。

■モデルハウスにすれば、奥さんに怒られず好き放題できるとか(笑)

− 八神氏コメント:それもあるかもしれませんが(笑)、それは冗談で、モデルハウスだからと言って、必要以上に豪華にしたり予算をかけているわけではまったくありません。私や家族にとっては自宅なので、住みやすさを犠牲にすることはできないんです。

八神直嗣氏
八神直嗣(ヤガミ ナオツグ)氏

■失礼しました。この家はどんな家なのでしょうか?

− 八神氏コメント:一言で言えば、自身の建築経験を踏まえて、住宅に取り入れたかったアイデアをとことん反映させた家です。

この家は自邸として、さらにお客様へのモデルハウスとして私が設計しました。もちろん施工も八神工務で行っています。やってみたいと思っていたアイデア、これからお客様に提案したいアイデアをたくさん取り入れています。

八神氏の住まいのアイデアをふんだんに取り入れた自宅兼モデルハウス
八神氏の住まいのアイデアをふんだんに取り入れた自宅兼モデルハウス

■どのような部分ですか?

− 八神氏コメント:たくさんあるんですけど、まずは土間とスキップフロアにもつながっているリビングダイニングですね。

土間をリビングと段差を設けてつなげていることで、子どもがここでカブトムシを育てたりとか、植物を育てて土いじりまでできるようになっています。どちらも実際にうちでやっていることです。その様子を、私と妻がリビングにいてもキッチンにいても、安心して見ることが出来ます。

スキップフロアでは主に子どもたちが勉強しています。音読する息子と隣に座って教えている妻の二人の様子を、私がリビングやダイニングから眺めているのが日常です。

スキップフロアになっていることで良いのは、適度に距離感が保たれること。息子はまだ小さいので目が離せない部分もありますが、家族それぞれ思い思いに時間を過ごすことができて、でも雰囲気は伝わってくる。縦方向の空間を上手く活用することで実現した居心地の良さです。

玄関土間
玄関土間
土間とリビングダイニングがつながっている
土間とリビングダイニングがつながっている
リビングダイニングはスキップフロアともつながる
リビングダイニングはスキップフロアともつながる
スキップフロアはこどもたちの勉強場所
スキップフロアはこどもたちの勉強場所

■最初からフルコースですね

− 八神氏コメント:さらに吹き抜けにもなっています。奥行きと縦の空間とで開放感もかなりあります。

それぞれにちゃんと意味があって、スキップフロアになっているのは適度な距離感が、吹き抜けには開放感だけでなくと一階と二階をつなぐ効果もあり、家族それぞれが思い思いに過ごしながらも、雰囲気を感じ取れる。そんな空間づくりに貢献しています。

その上で専門家がきちんと設計すればちぐはぐにならず、全体として空間が成り立つことを感じてもらえると思います。

スキップフロアが家族のちょうどいい距離感をつくる
スキップフロアが家族のちょうどいい距離感をつくる

ふんだんに散りばめられた工夫

ふんだんに散りばめられた工夫

■ほかにはどんな工夫があるのでしょうか?

− 八神氏コメント:家族のための家でもあるので、私の想いだけを取り入れた家ではありません。土間は奥さんから絶対に欲しいと言われて取り入れたものですし、リビングダイニングと水回りがつながった導線は、家事のしやすさを考慮したものです。

スキップフロアとつながったリビングダイニングに象徴される、家族の雰囲気を感じられるよう家全体が閉じられていない空間になっているなど、家族のことを第一に考えた家でもあります。

やりたいことを詰め込みながら、それらを空間としてバランスをとっていることが、この家の魅力として伝わったら、つくり手として嬉しいですね。

玄関土間は奥様からの要望を取り入れた
玄関土間は奥様からの要望を取り入れた

■ほかにはどんな魅力がありますか?

− 八神氏コメント:2階の吹き抜け部分に手すりをぐるっと回して、大きい布団を干せるようにしています。あえて天井を低くした寝室もポイントですね。その方がリラックスできる。

また、寝室とウォークインクローゼットの位置関係が、寝室の方が奥になっているのもユニークなところだと思います。逆に配置されていることが多いと思いますが、どちらかが休んでいるときでも、着替えるのが簡単なんです。

室内バルコニーのような使い方を想定した吹き抜け部分
室内バルコニーのような使い方を想定した吹き抜け部分 (2階)
天井を低くしてリラックスできる寝室
天井を低くしてリラックスできる寝室
あえてウォークインクローゼットは位置を逆にしている
あえてウォークインクローゼットは位置を逆にしている (奥が寝室)

− 八神氏コメント:小上がりには天井高があるので、ボルダリングウォールを施工しました。これはちょっとやり過ぎかなとも思ったんですけど、コロナ禍でなかなか外で運動ができなかったり、簡単なストレッチになるので、提案としては見てほしいです。

あとはOSB合板で施工した、2階にある隠れ家のような私のためにつくった書斎ですね。もっぱら私の仕事場になりつつありますが、隠れ家でもしっかりリビングから声が聞こえるようになっているんですよ。細かな部分ではありますが、こういったつくり手ならではの技術を見てほしいですね。

ボルダリングウォールを設置したユニークな小上がり
ボルダリングウォールを設置したユニークな小上がり
OSB合板で施工した隠れ家のような書斎が直嗣氏の仕事場
OSB合板で施工した隠れ家のような書斎が直嗣氏の仕事場
1階から呼びかけた家族の声が届くように設計されている
1階から呼びかけた家族の声が届くように設計されている

■この家を体験してもらって、お客様に一番伝えたいことはなんでしょうか?

− 八神氏コメント:家ってこんなに色々やっていいんだってことですね。吹き抜けも欲しいし、スキップフロアも欲しい。子上がりもあったら遊べるし、隠れ家のようなほっとできる空間もあったら嬉しい。

でも、そんなにやったらごちゃごちゃして居心地の悪い家になるんじゃないか。家づくりを考え始めて夫婦や家族で様々な要望が出てくると、そんな不安も出てくると思うんです。家族の顔を伺いながら、結局無難な家を選ぶお客様は多いと思う。

だけどその家に何年、何十年と住むんですよ。「あのときこうすればよかった」と後悔したら、それがずっとストレスになります。だからこそ、このモデルハウスを体験すれば、夢を膨らませてもらえると思います。

たくさんの要望をまとめている
たくさんの要望をまとめている

八神工務の変化する家づくりのスタイル

八神工務の変化する家づくりのスタイル

■八神工務とはどんな会社なんでしょうか?

− 八神氏コメント:基本的には地元のお客様を中心に、質実剛健の家づくりを行ってきました。さらに公共工事、アパートや店舗などの仕事も多くて、ほかの工務店と連携することもあり、地域とのつながりが深いと思います。歴史としては今年で60年以上を数え、今ではお客様からのご紹介も多くなりました。

■強みはどんな部分でしょう?

− 八神氏コメント:小さい会社のため、逆に言えば担当者がワンストップで家づくりのプロセスを担当するので、バランスを考えてコーディネートもすることが出来ます。これは八神工務のような小さい工務店の強みかもしれません。

あとは僕自身は家が好きで、建物が好きであるということ。新しい建物ができるとすぐに見に行ったりします。もちろん僕にも好みがあるので、満遍なくではないですが。
だからこそ、実際に形にしたいアイデアのストックがたくさんあります。そのいくつかを自邸にもふんだんに取り入れているんです。

夫婦どちらとも家づくりの細かいところ、スイッチとかインテリアをSNSで見るのが好きで、よく話をします。お客様にもそういう方が増えましたね。「インスタで見たんですけど、これをやってみたいです」とか。

夫婦ともにインスタで家づくりのヒントをチェックするそう
夫婦ともにインスタで家づくりのヒントをチェックするそう

■家づくりの変化がありますか?

− 八神氏コメント:そうですね。僕たちの会社も変化の途中だと思っています。僕の代で創業から3代目なんですが、やっぱり家づくりに求められるものが変わってきていると思うんです。

昔の工務店の家づくりと言えば、こちらが提案した家に対して「大工さんが言うなら」とお客様が受け入れてくれたので、それをそのまま建てればよかったんだと思います。要望があるお客様でも、その要望はフローリングにしてほしいとか、独立洗面にしたいとか、ある程度は決まった内容のものでした。

こちらから提案するものも、なるべく普通の家である方が喜ばれた。腕のいい職人が建て、質が高くて、安心できる。それが一番に求められているものだったんです。

ですが、今の家づくりは違います。独立洗面にこういうタイルを張ってほしいとか、そのタイルにもこだわりがある方がいますし、室内干しできる場所を作ってほしいとか、そこで懸垂もできてほしいとか、フローリングにするのであれば素材はこれで、張り方もこだわってとか、要望が明確でさらに個人的な内容です。

モデルハウスのリビングはヘリンボーン張り
モデルハウスのリビングはヘリンボーン張り
タイルや漆喰など多様な素材を使っている
タイルや漆喰など多様な素材を使っている

− 八神氏コメント:質が高くて安心は当たり前。そこに性能という要素が加わって、さらにお客様それぞれの暮らし方にフィットし、理想を叶えるためのアイデアを盛り込んでいくこと。これが現代のお客様が求めていることです。

情報過多の部分もあるのかもしれないけど、そのためには僕たちが家づくりの専門家であるだけでなく、空間や色使いの意識、遊び心といった感性の部分も含めて、お客様の要望に対して返せる提案を常にいくつか持っていないといけない。ライフスタイルの専門家でもなければいけないということだと思います。

■家づくりの専門家は、ライフスタイルの専門家でもあるべきだと

− 八神氏コメント:現代のライフスタイルは多種多様です。夫婦でも共働きが増えたし、働く時間帯も違っていたりします。オフィスだけでなく家で働く人もいます。自宅を店舗にしたい人も増えるでしょう。

家の中でもっとたくさんの趣味を楽しみたいし、その趣味だって幅広い。子どもが勉強する場所も自分の部屋ではなくなってきました。家族の時間をもっと増やすために、キッチンがリビングに向かい合うようになったり、アイランドキッチンになったり、リビングで集中できるようなスペースを設けたり、リビング階段なんかもそうですけど、暮らし方に合わせて間取りも変わっているんです。

家族それぞれの要望を取り入れながらバランスよく、それでいてかっこよくて、オシャレな家を建てることが現代の家づくりに求められていることではないでしょうか。

家族の要望を取り入れつつオシャレにまとめる
家族の要望を取り入れつつオシャレにまとめる

■八神工務はこれからどんな家を建てていきたいですか?

− 八神氏コメント:それはもう、この家を見てもらえれば分かっていただけるというか。家族の要望を叶えながら、家族が大切な時間を過ごせるかっこいい家を建てていきたいですね。

■ちなみに理想の家づくりというか、特定の要望がないお客さんに対しては、どんな家づくりをしますか?

− 八神氏コメント:それがないお客様が一番難しいのですが、でも腕が鳴ります。実際にはそういうお客様がすごく多いんですよ。まだ形になっていないだけだと思うので、こちらから聞き込んでいきます。

そのプロセスの長さはお客様によって異なるんですが、出てくる人はアイデアがどんどん出てきます。なので、心配しなくて大丈夫です。必ずお客様それぞれの理想の家の形があるはずですから。

■お客様には可能ならどんなことをしてきてほしいですか?

− 八神氏コメント:そういう意味では、お客様にもたくさんSNSでもいいし、雑誌でもいいですが、やってみたいアイデアや使いたいアイテムを集めてきてもらってもよいですね。

もちろん予算があるので、取り入れられるもの、取り入れられないものが出てくるかもしれませんが、それに対して楽しく話をしながら、出来る限り柔軟に対応できるのが、弊社のようなつくり手と一緒に家づくりをする魅力だと思います。

最初にいつもお客様に話すのは、「こういう暮らしがしたいな」「こんな空間がいいな」という想いがあれば、遠慮なく言ってほしいってことなんです。

■予算を気にして、自分から蓋をしてしまうお客様は多いかもしれません

− 八神氏コメント:皆さん、予算のことがあったり、無理だろうって思い込みがあったりで、遠慮してしまうんですよね。でも、一旦予算のことを忘れてもらいたいです。

最終的には専門家である私たちがバランスを取るので、そこは気にしないでもらいたいです。あれこれ要望を言ってもらっても、空間として居心地の悪いものになってしまうこともありません。

そこはある程度こちらを信頼してもらう必要がありますが、それはこの家を見てもらえれば直感で理解してもらえると信じています。

楽しいですよ、家づくりは。そこに共感してもらえるような家づくりがしたいですね。

共感してもらえるような家づくりがしたい

インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。

家づくりは楽しい

家づくりは楽しい

建築主であり設計主でもある八神氏は非常に多趣味だと仰っていた。それが色々なアイデアの入口となっているように、八神氏の自邸でもあるモデルハウスは、家族にとっての秘密基地のように、楽しい空間がところどころに散りばめられた家だ。

それが変な目立ち方をしているわけではなくて、全体としては居心地の良さが際立っていて、家族の要望を上手くまとめている。しかもそれでいてオシャレな家という印象の方が強いくらいだ。

誰かにとってではなく、家族にとってという部分がポイントで、父親にとっても母親にとっても、子どもたちにとっても、楽しい秘密基地のようであり、隠れ家のようでもありながら、リビングダイニングは開放的で、家のどこにいても家族の気配を感じられる工夫が凝らしてある。それが結果的にリビングダイニングに家族が集まるような一つの空間を作っている。

アイデアに溢れた家でありながら、奥さんのこと、子どもたちのことを一番に考えて設計したことがそこら中から伝わってくるのだ。しかも、何度も言うが雰囲気はオシャレなのである。

それがどうしてできるのか、やっぱり家づくりの専門家だからだ。家づくりを全力で楽しむつくり手が、その遊び心をふんだんに発揮しながら、奥さんのことを考えてオシャレに、子どものことを考えて一体感を与え、丁寧にまとめ上げた家。

家は家族の暮らしを楽しくて豊かにできるもの、だからこそ家づくりを楽しもう。そんな八神氏の家づくりにかけるさわやかなパッションが伝わった気がした。

八神工務が建てた住まいをYouTubeで紹介しています
掲載企業・ブランド紹介

八神工務 (ヤガミ コウム)

昭和29年創業。木造住宅から店舗のリノベーションまで幅広く手掛ける技術力を持った工務店。八神氏が3代目となり、家づくりのスタイルが変化の真っただ中で、まずは自邸をモデルハウスとすることで、そのスタイルをお客様に伝えている。大工職人と工場を持っていることで一貫した施工力を維持している。

公式ホームページはこちら
https://yagamikoumu.com/

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