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ホテルに泊まるより快適な家
「リゾートのような家で、都会で生活する人に”癒し”を提供したい」そんな想いをもって家づくりに取り組むのが埼玉県の浦和地域 (さいたま市) を中心にする黒澤工務店 (クロサワ コウムテン) だ。
黒澤工務店の家づくりは白を基調としている普通の家とはまったく違う。ベージュやブラウン系を基調とし、照明にもこだわり抜いて、まるでリゾートホテルのような家づくりを基本にしているのだ。
実際にお客様の中には海外に旅行へ旅行に行かれるお客様も多いが、「南国のホテルに泊まってきたけど、自分の家のほうが良かった」そんなことを言われたこともあるそう。家具もオリジナルで設計し、一部はバリで発注・製作をしているこだわりようだ。
また、開放的でありながら、夏は涼しく冬は暖かい快適な空間となるように、デザインのレベルを高めながら性能を突き詰めてきた。そのこだわりが、家がホテルよりも快適というリゾート住宅を形づくっている。
家を癒しの場にするためにリゾート住宅をつくる。そんな想いをもって「テクノロジー&デザイン」というコンセプトを掲げ、家づくりに取り組む黒澤隆哲 (クロサワ タカノリ) 氏に話を聞いた。
癒しのためのリゾート住宅
■黒澤工務店とはどんな会社ですか?
− 黒澤氏コメント:簡単に言ってしまうと、大人向けのリゾート住宅を造っていると考えています。お客様はデザインに興味を持っていただけて、そこから入ってきていただく方が多くて、吹き抜けであるとか、落ち着いた雰囲気であるとか、最初は見た目です。
でもお話を伺っていると、ご夫婦ともにフルタイムで忙しく働いていたりとか、子育てで大変だったりと、都会での暮らしの中で癒しやくつろぎを求めていることがよく分かります。
そういったニーズが弊社の提案しているデザインである「リゾート感」とマッチして、多くのお客様が求めてこられているのではないでしょうか。
■リゾート感ですか?
− 黒澤氏コメント:皆さん日々の生活の中で疲れを感じたときに、家以外の別の場所に行くじゃないですか。ホテルや旅館がまさにその代表だと思うんですけど、それって自宅が疲れを癒せる場所になっていないからだと思うんですよね。
家を一番快適な空間にできれば、その必要がなくなります。逆に言えば、家がそうなっていないから、別のところに行って癒されようという発想になってしまうのではないでしょうか。つまり、家が最高の癒しの場所であればいい。もちろん訪れる土地の良さをすべて家で補おうということではありませんが、そのために弊社では、リゾート感のある住まいを提案しています。
■具体的にどんな家をつくるのでしょうか?
− 黒澤氏コメント:ほとんどの家具をお客様の家に合わせてひとつひとつ作ります。水回りもキッチンは基本的には造作 (オリジナル) です。
ソファなどの家具の一部については、より本格的な雰囲気を取り入れるために設計をこちらで行って、バリの職人に製作してもらっているものもあるんです。
通常は既製品をそのまま使っている会社が多いと思いますが、他の会社ではできないものも多いと思います。
■そこまでオリジナルでつくる目的は何でしょうか?
− 黒澤氏コメント:家をつくるのと同時に、空間づくりということを強く意識しているからです。時にはアートまで含めて提案します。提案していないのは家電くらいで、家に関わることすべてです。
空間全体を考えてコーディネートを行っているのは、それがリゾート感の演出以上に、住まれた後の満足感につながるからです。一軒一軒、家の雰囲気に合わせてオリジナルでつくることで、色味のブレがないなど全体的に調和したまとまりをつくることが出来ます。
全体的なまとまりがあると、「こういう暮らしがしてみたかった」という家そのものの満足感になります。もちろん予算に合わせたラインアップがあるので、お客様に合わせた提案にはなりますが、私としてはすべて提案させてほしいという想いです。
癒しのための照明デザイン
■ほかに癒しにつながる家の工夫がありますか?
− 黒澤氏コメント:照明にこだわっています。照明は、人の気持ちに大きな影響を与える大切な要素だと思うのですが、一部のお客様はあまり重要視されていない印象を持っています。
特に気にしているのは明るさです。基本的に通常の家は、現代の疲れた人たちにとって明るすぎるくらいに設定されていると思います。
でも、休日を除けば、メインで家にいる時間って朝か夕方ですよね。弊社の場合はそこにターゲットを合わせるイメージでデザインしています。
■照明もデザインされているということですか?
− 黒澤氏コメント:照明はただ明るさを与えるものではありません。例えば、リビングダイニングと寝室では、灯りの当て方は変わるべきですよね。
リビングダイニングは、全体をまんべんなく明るくしておく必要ってないんです。食事が美味しそうに見えたり、家族とのだんらんのために気持ちが安らいだりと、照明にも機能と目的が求められます。
寝室は、家の中で最も気持ちが緩む場所。直接灯りが当たらないよう、間接的に灯りが当たるように照明を設計します。演出としても明暗があるほうが空間として豊かに見えますし、気持ちが切り替わることでリラックスできる効果も期待できます。
そういった照明のデザインは、インテリアでもある間接照明の提案にも及びます。目的にフォーカスして照明を選択すれば、もっとリラックスできて豊かな空間になるんです。
■照明にも目的があるんですね
− 黒澤氏コメント:さきほどのリビングの照明の話がそうなんですが、全体が均一に明るいことで、人は気にしなくていいものまで気にしてしまうんですよね。脳が勝手に働いてしまう。
雰囲気のいいレストランだって、テーブルだけがぼんやりと明るくて、裏でせわしなくしているスタッフの姿は見えません。だから目の前の人との会話に落ち着いて集中できる。
それなのに家に帰ってきたら過剰なくらい明るいのはおかしいです。だからどっと疲れを感じる。レストランほど極端な照明ではないですが、家の中に取り入れていけない理由はありませんよね。
■実際のお客様の反応は?
− 黒澤氏コメント:照明全体にかけている費用はほかの会社の倍くらいになると思います。ですが、暮らし始めてからのお客様の話を聞いていても、すごく満足してもらっている部分なんです。
不安に感じる方には、実際に住まれているお客様の自宅を見てもらっています。子どもの頃からの刷り込みもあって、なるべく明るくって考えてしまいがちなんですけど、実際に体験していただくと、暗いと言われることはほとんどないですね。
テクノロジー&デザイン
■ほかに黒澤工務店の特徴を教えてください
− 黒澤氏コメント:もうひとつ大きな特徴は、空間を作るための技術の部分です。吹き抜けと窓が開放的な空間をつくっていますが、これは家の性能が低ければ、夏は暑く冬は寒いといった快適な暮らしとはかけ離れてしまいます。
そのため、断熱性だけでなく、気密性という部分でも施工に気を配っていて、高い性能があります。技術とリゾート感という信念を踏まえて「テクノロジー&デザイン」という弊社のコンセプトにもしているくらいです。
■リゾート感のために技術を高めているという事ですか?
− 黒澤氏コメント:弊社は腕のいい大工だった祖父が創業した工務店という歴史があって、腕のいい職人が数多く残っています。だからこそ造作ができるし、高いレベルの施工が出来ます。
ですが、性能や耐震性に関わる構造などは、そんなバックグラウンドがなくても当たり前に実現すべき時代だと思っているんですよ。
大切なのは技術があった上で、それをどういう形でお客様に提供するか、どんなふうに暮らしてほしいかを家という形に落とし込むか、という事だと思います。
それが弊社の場合は解放感であったり、リゾート感の演出に生きているということです。
黒澤工務店のこれから
■黒澤工務店の今後を教えてください
− 黒澤氏コメント:この会社は祖父が浦和で創業し、私が3代目です。腕のいい大工だった祖父には「いいものをつくりたい」という想いがあって、それが常にこの会社の根底にあります。
私自身その祖父にならって、いいものをつくりたいとずっと考えてきました。いいものは、その時代に合わせて変化するはずです。それが今の「テクノロジー&デザイン」の家につながっています。
ですが、これからは住宅以外の視点も持ちながら、家づくりをしていくことが必要なのかなと考えています。
例えば商業施設にははっきりと求められる目的があります。ホテルならくつろげてリフレッシュできること、レストランなら家族や友人と楽しい会話ができることなどですね。
実際にホテルやレストランを経営すれば、ダイレクトにお客様の反応が返ってきますから、その目的のために求められる空間づくりが何か、より理解できるでしょう。もちろん僕自身もそういった場所が好きでよく足を運びますが、経営して得られる生の声にはかないません。
そうすれば、今以上の癒しやくつろぎを感じてもらえる家づくりのヒントが得られるはずです。反対に家づくりの技術を商業施設の空間づくりに生かすことも出来ます。
実現できるかは分かりません。ですが、常にそういった視点をもって、家づくりを進化させていきたいと思っています。
インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。
家がリゾートなら最高という当たり前のこと
家の目的の一つとして、「癒し」という当たり前の機能があることをあらためて思い出した。
癒されるために旅行に行くというのは、黒澤氏の言う通り確かに皮肉な話だ。家がそのためのリゾート空間になっていればいい。でも、それは何か夢のような感じがしてしまう。
それは多分、私たちが住んできた家がリゾートホテルや高級旅館とはかけ離れた雑多な印象をもっているからではないか、と今回の取材を通して気が付いた。
空間全体をコーディネートすることで、リゾートのような家をつくる。そこには造作や照明のデザインの力があって、空間を買うことができる唯一の体験である家づくりにおいては、まったく贅沢な想いではないと思う。
ホテルライクというデザインが流行になる前から、黒澤工務店では家づくりを通して癒しを提供したいという想いがあった。そしてそのために家の性能を高める。そのプロセスは、家そのものの本質的な機能を取り戻そうとしているように思える。
明確な目的を持った「テクノロジー&デザイン」がリゾート住宅に行きついたのは、とても当たり前のことなのかもしれない。家がリゾートなら最高なのだ。
掲載企業・ブランド紹介
黒澤工務店 (クロサワ コウムテン)
埼玉県の浦和地区で創業。76年目を迎え、黒澤隆哲さんは3代目。高い技術力を背景に「テクノロジー&デザイン」を掲げて、都会の生活の中でも癒しを感じられるリゾート住宅を提案する。造作による全体のコーディネートや開放感のある空間が特徴。
公式ホームページはこちら
https://www.kurosawakoumuten.co.jp